◆ F22Cエンジンベンチテスト編 ◆

■ エンジン仕様は「エンジン編」で紹介させて頂いているTODAさんの2.2Lキットを組込んだF20Cです、
エンジンベンチに台を作ってエンジンを設置し、水廻りや排気管を接続し、コンピューターも接続して
始動出来る状態を作るまでに約1日くらい時間が掛かるでしょうか?
エンジンに火を入れる前にプラグが付いていない状態でスロットル全開にしてクランキングし、油圧を上げて
(油圧が上がる事の確認も兼ねて)からエンジンに火を入れます。
さて、慣らし運転開始!少しずつ回転を上げますが約3〜4時間程度、MAX4000rpmくらいで回し続けます
「えっ?たったの3〜4時間?」と思われそうですが、走行状態を考えると5速で4000rpmと言えば、
車にもよりますが、時速120〜140kmの速度は出ますから、そのまま連続で4時間走る距離といえばなかなかのものです、
慣らし時間が終わってもいきなり全開にする訳では無く、下から少しずつ回転数を上げながらマップを決めていきますので、
事実上は、もう少し長い時間慣らしをしているのと同等になります、都合1000kmは楽に走ると思って良いでしょう。
今回のセッティングの方向性としては、お客様の用途がストリートからサーキットまで幅広くご使用になるのと、
エアコンなど快適装備はそのままなので、当初よりエンジンのマネージメントはノーマルベースにトラストさんの
e-マネージを組み合わせる事に決定していました、こちらのお客様はすでにチューニング済みのコンピューター
(ここでは「A」とさせて頂きます)を使用されておりましたので、これにe-マネージを組み合わせる事としました。

■ 画像で見るとおり、作業台の上に「ゴチャっと」置いてありますが
F20Cエンジンはノーマルコンピューターの場合、スピードメーターAssyや
排気ガス対策用のエアーバルブなどが接続されていなければ、
エンジンが動かないんですよ、要するに、完全現車状態でなければならないのです
何一つ欠けてもエラーが出てしまう訳です、初めてF20Cをベンチテストした
時は、エンジンが動かせなくて、相当ハマったものです(笑)

■ 第一段階はおよその燃料をマッピングして、その後、およその点火時期をマッピングし、おおまかなマップを
形成していきます、エンジンベンチの場合は、低い回転域でも全負荷をかけられるのでこの作業は必須です、
例えば急な坂道を5速3000回転でスロットル全開にして上っている時を想像して見て下さい、そう、そんな感じです。

■ エンジンベンチでは、特に点火時期の監視が可能なので、より正確に点火時期の変化を知るためにクランクプーリー付近に
CCDカメラ(左画像の黄色い○部分)を取り付けて、コンピューター上で点火時期を変化をさせた時に、
エンジン側でも変化している事を正しく知る事が出来るようにしてあります。

■ こんな感じで画面に写ります
■ 第2段階では、煮詰めの作業に入ります、まず空燃比をある値に固定して、点火時期を変化させて、
トルク特性を見ます、次に空燃比をセットし直しトルク特性を再度確認します、
これらの作業を繰り返して、最良の点火時期、最もトルクの出る空燃比を
全ての回転域で探っていきます、何故何度も繰り返すかというと、点火時期を変えると
空燃比が変わってしまうので、一度では決まらないからなんです。

■ ベンチ室の天井からぶら下がる謎の物体、実は、これが点火時期を決める大きな役割を
果たしているんです、当社オリジナル「ノッキングモニター」であります。
銅管に繋がったお料理用のステンレス製ボールに紙を張って、スピーカーのようにしてあります。
銅管はエンジンブロックのノッキングセンサー取付部にバンジョーボルトを用いて接続されており、
そこから出る音が銅管を伝わって来ます、しかし、ノッキング音の周波数だけを
拾って聞こえる様にしなくてはならないので、いわゆる「振動板」はいろいろな材質をテストしました、
現在は、この紙で落ち着いていますが、もう少し、材質を検討する必要があるみたいです。

■ S2000コンピューターに取り付けたe-マネージの画面です。
エンジンベンチでは、どの領域でも完全に一定にしたエンジン負荷の状態を保持する事が出来ますので、
点火時期も燃料補正もひとマスずつセッティングが出来ます、従って全てのマス一つずつに対して
最適な燃料・最適な点火時期をセット出来ますので、全ての領域において最適で最大のパワーと
効率を追求する事が可能です。
e-マネージのように、ノーマルCPUに対して増減が可能なサブコンの場合、ノーマルCPUの数値が
不明確でも、当社で行っている様な点火時期をカメラ監視を行う事により、
点火時期が実際に何度になっているのか?が良くわかって、とても安全にセツティングが出来ます。
セッティングは極めて順調に進んでいましたが、点火系で思わぬ不具合と遭遇する事になりました…

■ 不具合を見つけるために、オシロスコープを接続して点火信号を確認したところ、
点火マップ上である一箇所の点火時期を変更したマスを読んだ瞬間に、左図のように
点火が一回休んでいるのを発見しました。
※上の波形が正常な状態で下の波形が不具合です。
一箇所だけ波が消えているのがわかりますか?

■ 早速トラストさんの開発部に連絡をして、当社の情報を元に修正バージョンを作製して頂き、
正常動作する様になり、不具合解決となったのです。
エンジンベンチならではの発見でありました、めでたしめでたし♪

■ ベンチの計測結果には、計測時の条件を入力して、結果の精度を一律にしております、
左の画像は、ベンチ室内に設置されている気圧計・乾球計・湿球計・温度計です。
各数値をベンチデーター入力ソフトに入力する事により補正率を計算しています。
■ 最終的にセッティングを煮詰める過程で、NAでは特に重要な要素となるEXマニホールド(タコ足)を
決めるために、オーナーさんが元々使っていた某メーカーのEXマニホールドと、
新たに購入されたASMさんのEXマニホールドを比較テストしてみました、
セッティングの途中経過なので、最大出力・最大トルクは、このエンジンの最終的な数値ではありませんが、
結果と傾向を知る事により、どちらを使用するか決める基準となり得ます。
◆ TODA製2.2Lキット仕様のテスト結果
■ 表の見方
RPM⇒エンジン回転数
TA⇒吸気温度
K⇒修正係数
K.LOAD⇒修正後ベンチ荷重
K.TORQUE⇒修正後エンジン最大トルク
K.OUTPUT⇒修正後エンジン最大出力
※ベンチ結果はあくまでも当社エンジンベンチテストによる結果ですので、
絶対的な数値では無い事を申し沿えておきます。
◆ ASMさんのEXマニホールドのテスト結果
条 件
| 乾球温度
| 24.0
| 湿球温度
| 16.0
| 大気圧力
| 755
| 飽和水蒸気圧
| 13.63
|
RPM
| LOAD
| TORQUE
| OUTPUT
| TA
| PW
| K
| K.LOAD
| K.TORQUE
| K.OUTPUT
|
4000
| 30.3
| 21.70
| 121.2
| 22.0
| 9.6
| 0.99011
| 30.000
| 21.485
| 120.00
|
4500
| 29.0
| 20.77
| 130.5
| 22.0
| 9.6
| 0.99011
| 28.713
| 20.565
| 129.21
|
5000
| 28.2
| 20.2
| 141.0
| 22.0
| 9.6
| 0.99011
| 27.921
| 20.000
| 139.61
|
5500
| 29.3
| 20.98
| 161.2
| 22.0
| 9.6
| 0.99011
| 29.010
| 20.773
| 159.56
|
6000
| 33.3
| 23.85
| 199.8
| 23.0
| 9.6
| 0.99212
| 33.038
| 23.662
| 198.23
|
6500
| 33.4
| 23.92
| 217.1
| 23.0
| 9.6
| 0.99212
| 33.137
| 23.732
| 215.39
|
7000
| 32.9
| 23.56
| 230.3
| 24.0
| 9.6
| 0.99413
| 32.707
| 23.422
| 228.95
|
7500
| 31.8
| 22.77
| 238.5
| 25.0
| 9.6
| 0.99614
| 31.677
| 22.682
| 237.58
|
8000
| 31.3
| 22.42
| 250.4
| 25.0
| 9.6
| 0.99614
| 31.179
| 22.333
| 249.43
|
◆ 某社EXマニホールドのテスト結果
条 件
| 乾球温度
| 24.0
| 湿球温度
| 16.0
| 大気圧力
| 755
| 飽和水蒸気圧
| 13.63
|
RPM
| LOAD
| TORQUE
| OUTPUT
| TA
| PW
| K
| K.LOAD
| K.TORQUE
| K.OUTPUT
|
4000
| 30.0
| 21.48
| 120.0
| 24.0
| 9.6
| 0.99413
| 29.824
| 21.354
| 119.30
|
4500
| 28.4
| 20.34
| 127.8
| 24.0
| 9.6
| 0.99413
| 28.233
| 20.221
| 127.05
|
5000
| 27.9
| 19.98
| 139.5
| 24.0
| 9.6
| 0.99413
| 27.736
| 19.863
| 138.68
|
5500
| 28.7
| 20.55
| 157.9
| 24.0
| 9.6
| 0.99413
| 28.532
| 20.429
| 156.92
|
6000
| 33.0
| 23.63
| 198.0
| 24.0
| 9.6
| 0.99413
| 32.806
| 23.491
| 196.84
|
6500
| 33.0
| 23.63
| 214.5
| 25.0
| 9.6
| 0.99614
| 32.873
| 23.539
| 213.67
|
7000
| 32.6
| 23.35
| 228.2
| 25.0
| 9.6
| 0.99614
| 32.474
| 23.260
| 227.32
|
7500
| 31.2
| 22.34
| 234.0
| 25.0
| 9.6
| 0.99614
| 31.080
| 22.254
| 233.10
|
8000
| 30.6
| 21.91
| 244.8
| 26.0
| 9.6
| 0.99814
| 30.543
| 21.869
| 244.34
|
■ 以上の結果から、ASMさんのEXマニホールトが全域で好結果を得ましたので、
自信を持って最終的に使用する事に致しました。
テストエンジンは2.2LのチューニングエンジンですがSTD(ノーマル)エンジンに
装着しても、総じて好結果を得られるものと思われます。
◆ TODA製2.2Lキット仕様の最終結果
■ 参考までに、当社が過去にテストした純ノーマルF20Cのベンチデーターと今回の結果を
比較できるように、両方とも掲載してみました。
◆ 参考グラフ・純ノーマルF20Cの当社ベンチテスト結果
条 件
| 乾球温度
| 24.5
| 湿球温度
| 16.5
| 大気圧力
| 770
| 飽和水蒸気圧
| 14.07
|
RPM
| LOAD
| TORQUE
| OUTPUT
| TA
| PW
| K
| K.LOAD
| K.TORQUE
| K.OUTPUT
|
3500
| 26.0
| 18.62
| 91.0
| 33.0
| 10
| 0.98881
| 25.709
| 18.412
| 89.98
|
4000
| 25.5
| 18.26
| 102.0
| 32.0
| 10
| 0.98687
| 25.165
| 18.020
| 100.66
|
4500
| 25.2
| 18.05
| 113.4
| 32.0
| 10
| 0.98687
| 24.869
| 17.813
| 111.91
|
5000
| 25.4
| 18.19
| 127.0
| 33.0
| 10
| 0.98881
| 25.116
| 17.986
| 125.58
|
5500
| 26.5
| 18.98
| 145.8
| 33.0
| 10
| 0.98881
| 26.203
| 18.768
| 144.12
|
6000
| 28.9
| 20.7
| 173.4
| 33.0
| 10
| 0.98881
| 28.577
| 20.468
| 171.46
|
6500
| 29.8
| 21.34
| 193.7
| 34.0
| 10
| 0.99075
| 29.524
| 21.143
| 191.91
|
7000
| 29.4
| 21.06
| 205.8
| 34.0
| 10
| 0.99075
| 29.128
| 20.865
| 203.90
|
7500
| 29.2
| 20.91
| 219.0
| 35.0
| 10
| 0.99268
| 28.986
| 20.757
| 217.40
|
8000
| 28.2
| 20.2
| 225.6
| 37.0
| 10
| 0.99655
| 28.103
| 20.130
| 224.82
|
8300
| 27.7
| 19.84
| 229.9
| 39.0
| 10
| 1.00040
| 27.711
| 19.848
| 230.00
|
8500
| 25.5
| 18.26
| 216.8
| 40.0
| 10
| 1.00232
| 25.559
| 18.302
| 217.25
|
※ノーマルF20Cの当社結果はメーカー発表のカタログ数値より低いですが
あくまでも、当社エンジンベンチテスト結果である事を申し沿えておきます。
◆ 当社組立てによるTODA製2.2Lキット+TODA製ハイプロフィールカムシャフト仕様の当社ベンチテスト結果
条 件
| 乾球温度
| 20.5
| 湿球温度
| 19.0
| 大気圧力
| 748
| 飽和水蒸気圧
| 16.47
|
RPM
| LOAD
| TORQUE
| OUTPUT
| TA
| PW
| K
| K.LOAD
| K.TORQUE
| K.OUTPUT
|
4000
| 30.0
| 21.48
| 120.0
| 18.0
| 15.7
| 1.00315
| 30.095
| 21.548
| 120.38
|
4500
| 28.8
| 20.63
| 129.6
| 18.0
| 15.7
| 1.00315
| 28.891
| 20.695
| 130.01
|
5000
| 28.0
| 20.05
| 140.0
| 19.0
| 15.7
| 1.00522
| 28.146
| 20.155
| 140.73
|
5500
| 29.3
| 20.98
| 161.2
| 19.0
| 15.7
| 1.00522
| 29.453
| 21.090
| 161.99
|
6000
| 33.5
| 23.99
| 201.0
| 20.0
| 15.7
| 1.00728
| 33.744
| 24.165
| 202.46
|
6500
| 33.5
| 23.99
| 217.8
| 22.0
| 15.7
| 1.01140
| 33.882
| 24.263
| 220.23
|
7000
| 32.8
| 23.49
| 229.6
| 22.0
| 15.7
| 1.01140
| 33.174
| 23.758
| 232.22
|
7500
| 32.0
| 22.92
| 240.0
| 22.0
| 15.7
| 1.01140
| 32.365
| 23.181
| 242.74
|
8000
| 31.4
| 22.49
| 251.2
| 23.0
| 15.7
| 1.01346
| 31.823
| 22.793
| 254.58
|
8300
| 30.6
| 21.91
| 254.0
| 23.0
| 15.7
| 1.01346
| 31.012
| 22.205
| 257.40
|
8600
| 29.3
| 20.98
| 252.0
| 24.0
| 15.7
| 1.01551
| 29.754
| 21.305
| 255.89
|
■ 以上の結果から、当社においてはノーマルF20Cと比較して最大馬力は+27.4馬力UPと言う結果になりました。